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「羽村さん、何飲まれます?」
「え」
カチン、石になったみたいに固まっている私の緊張を知ってか知らずか、神谷さんはメニューを広げて私の方を伺う。
そして目の前にある切子グラスに入ったお酒を見て、軽く頷く。
「……ああ、まだ残ってるんですね。いま飲んでるのはどれですか?」
「あ、えと、呉春、です」
「初めて聞く名前だ。どこのお酒ですか?」
「大阪、だったと思います」
「へえ、大阪。お好きなんですか?」
「はい、あんまり置いている店がないので、見つけたら、頼んじゃいます」
「そうなんですか。旨いんですね?」
「ええと、飲みやすくて、気に入ってるんです」
神谷さんが話を振ってくれるおかげで、何とか赤面も収まってきた。
お酒の話題なら、ついていける。
私は平常心を心がけながら、神谷さんとの会話を続けた。
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