【第2話】はじめての、夜

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  「羽村さん、何飲まれます?」 「え」 カチン、石になったみたいに固まっている私の緊張を知ってか知らずか、神谷さんはメニューを広げて私の方を伺う。 そして目の前にある切子グラスに入ったお酒を見て、軽く頷く。 「……ああ、まだ残ってるんですね。いま飲んでるのはどれですか?」 「あ、えと、呉春、です」 「初めて聞く名前だ。どこのお酒ですか?」 「大阪、だったと思います」 「へえ、大阪。お好きなんですか?」 「はい、あんまり置いている店がないので、見つけたら、頼んじゃいます」 「そうなんですか。旨いんですね?」 「ええと、飲みやすくて、気に入ってるんです」 神谷さんが話を振ってくれるおかげで、何とか赤面も収まってきた。 お酒の話題なら、ついていける。 私は平常心を心がけながら、神谷さんとの会話を続けた。 .
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