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「有栖、危ない!ソイツ上級の魔物だ!三年生を一人食い殺してる」
有栖はアゲハの方に向き直って言霊で支持する。
『あげは、止めろ!』
『うん』
あげはが大トカゲを召喚して佐々木くんに巻きついた。
「こんなもので僕が殺られるか!」
ほぼ鬼のように異形になった佐々木はトカゲを噛み殺した。
「有栖っ危ない!風斬りっ」
佐々木の右腕だけかろうじて斬り落とした。
「霊神破魔斬光!」
有栖の手に弓が現れ引いた。飛びかかる寸前矢を射つ。
破魔矢は魔物の心臓を貫き黒い液体がボトボト流れヤツ動きが止まった。
「十六夜!今だ!斬れー!」
俺は烈火刀で斬り裂いた。悪鬼は霧となっって消滅した。
「白兎、また蘇るといけない。封印せよ」
「了解~」
白兎は粉の上に錫杖を据えると呪文を唱えた。粉は煙になって天へと昇って行く。校庭では黒兎が有田と里崎の浄化を成功させていた。
「今日はここまでだな。ここまで上級の魔物がいるとは・・・他にもいる可能性も出てきたな。注意していこう」
有栖は踵を返して車に向かった。
『十六夜、帰えろ』
あげはが俺の手を引いた。すると有栖の鋭い言霊が飛ぶ。
『あげは、いくぞ!』
『十六夜も・・・』
『駄目だ!』
声を荒げてあげはの手を引っ張った。さすがにムッと来て有栖に掴みかかりこっちに向けた。
「俺が気に入らないからってあげはちゃんに八つ当たりするな!」
「今度はあげはか?、十六夜」
口元に微笑みがあるものの、蒼い眼が深く悲しみにくれているのが分かった。
はっとなって手を離した。靫との事も・・・有栖は全部わかっている。
それからは何も言えず四人が車に乗り組むのを後ろから見ていた。
朝、自分の身体をみて察したんだろうか?
今日は天叢雲剣は使わなかったが・・・あの弓・・・霊力を使う物なのだろうか。
靫が今回は手ごわいといっていたけど、結局しとめたのは自分だったし、あまり霊力を使わなくて済んだのか?
ただしあの眼には参った・・・完璧に嫌われてしまった。
ただ仕事の時は頼りにして任せてくれていたが、元の主従の関係に戻れるのだろか?
心のどこかに棘が刺さったようにチクチクと痛んだ。俺は自分で身を引く覚悟をしたのに、普通の主従関係では嫌だということか?
疑問ばかりで頭の中がいっぱいになり自問自答を繰り返す。
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