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欲望とは果てしないものだと感心する。
自分が相手を愛しているからって、相手にも愛されたいと思ってしまうなんて。
秘めた思いなのだ。これは越えてはいけない。
何度も何度も繰り返し、自分の心に言い聞かせる。『有栖は主(あるじ)』なのだと。
そのまま寮のベッドにもぐり込んで眠りにつく。先にラテがもぐりこんで寝ていたから温かい。このまま口もきかず、顔も見れないのはツライ。
今までみたいな他愛のない事は話せないのだろうか。会いたい・・・会いたさが募る。夢でだけでも有栖の笑った顔がみたいな、我が儘なんだろうか。
《有栖side》
屋敷に帰るともう夜は更けていた。
ろくろく顔も見なかったが相変わらず動きも良かったし元気でやっているようだ。
あげはが怒っていたな・・・僕と違って十六夜は誰でも好かれる。
テーブルの上にあるガラスの呼び鈴を鳴らす。
「はい、お呼びでしょうか?殿さま」
「七夜、こんな時間にすまないが黒兎を呼んでくれ」
「はい、かしこまりました」
七夜は踵を返して部屋を足早に出て行った。しばらくしてノックがある。
「若、お呼びですか?」
「黒兎、今日はご苦労だった。万事うまくいったのはお前の功績だ」
「いえ。十六夜の方でしょう?」
名を聞くだけで体がビクッと震えた。自分でも情けない。
「ご用件は・・・?」
「靫と話したい」
「・・・嫌だといったら?」
「なぜ?」
「私も知りたくない事を聴くはめになるからです」
「黒兎・・・お前」
しばらくの沈黙のあとでボクが口を開いた。
「黒兎にはすまないが、やっぱり靫と話したい。体を貸してくれ」
「・・・・・」
「いつまでこのお役目を賜るのでしょうね、若」
「すまない・・・黒兎、傷つけてばかりだな」
「そうです。まったくお二人とも・・・」
黒兎は眼を閉じ天を仰いだ。ゆっくり眼を開ける・・・緋色の眼。靫が黒兎に宿る。
「靫、話を聞きたい」
「オレには話はないけど?」
「お前になくともボクにはあるっ!」
「やけに興奮してるな。十六夜が欲しけりゃ自分が寝ればよかっただろ?」
耳まで赤くなる・・・身体が熱い。
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