5月

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同日 夜 南風原病室壕にも、米軍が首里に入ったという知らせと、南部への撤退命令が届いた。 そして、4人になってしまった学徒達は司令官室に集められた。 4人が揃ったことを確認した滝は、今日入った情報を学徒達に話始めた。 「本日未明、米軍が司令部のある首里に入った。首里は、我が日本軍が守ってくれているが、司令官は今後のことを考えられ、南部撤退を決意なされた。よって、南風原病室壕も解散する。動ける者は南部へ撤退!!戦えぬ者には、これを渡してくれ」 そう言うと後ろを振り返った。 遠山が立っていて、何かを持っている。 -白い液体…牛乳だ。 一見普通の牛乳だが、千代は何だか嫌な予感がした。 幸子も不信そうにそれを見る。 「この中には青酸カリが入っている。間違っても飲んではならないぞ。こぼさないように、一人一人に渡してくれ」 遠山はそう言いながら牛乳の入ったカップを学徒達に渡す。 「そんな…!!みんなを殺すんですか!!!??」 千代が悲鳴に似た声を出す。 「ここに残っているのは、もう戦うことのできぬ者ばかりだ。何もせずともいずれ死に逝く…ならば捕虜になる前に逝かせてあげることがせめてもの償いではないか?」 滝は淡々と言い放った。 滝の言葉に千代はただ唇を噛んだ。 米軍の捕虜になることは、日本人にとって、最大の恥辱だ。 「捕虜になる前に自決せよ」 自分もそうすると決意していた……。 -千代は黙って、牛乳の入ったカップを受け取った。
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