起床

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(ここは……どこだ?) その捲れ上がった布団の下から現れたのは、スーツ姿の黒髪の男。 うつ伏せの状態から起き上がり、後頭部を掻きながら部屋を見回す。 男の名前は園田 恭二(ソノダ キョウジ)。 ダイアリーという大手の株式会社に入社したばかりの二十二歳。 ダイアリーは、セキュリティを専門とする会社で、日本の家庭の約半分はダイアリーに家のセキュリティを任せている。 不況の中、安定した職業に就こうと、ダイアリーに入社を試みる人は少なくない。 周りのベッドにも人が寝ているのに気付き、起こそうかと迷ったが、それ以上に園田の興味を引く物があった。 「とんでもなくでかいな」 独り言を呟き、巨大な画面へと立ち上がって歩き寄る。 しかし、電源を点けて大きな音がすれば、寝ている者を起こしてしまうと思い、遠慮しておいた。
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