起床

6/25
前へ
/771ページ
次へ
「えーっとさ、思ったんだけど、ほぼ誘拐に近いと思わない?」 園田は率直に質問をぶつけた。 この女性も自分と同じ状況下にあるわけだし、単純に意見が欲しかったのだ。 「ん?なんで?」 「なんでって……ほら、眠らされてここに連れてこられたじゃん?」 女性の反応は園田の予想とはかけ離れていて、園田は一瞬言葉に詰まってしまった。 「あはは。 同意書、あんまり真剣に読まなかったでしょ? 書いてあったよ」 またもや女性は意外な反応。 初めて見せる笑顔は、なんの作りもない、思わず出てしまった笑いだった。 就職活動に没頭していて、作り笑いばかりで機嫌を取っていた園田は、目の前の女性の無警戒な笑顔に懐かしさを感じていた。
/771ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1104人が本棚に入れています
本棚に追加