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「羽村さんは二十七、だよね?」
「はい。もう誕生日きちゃいましたから」
「そっか。お祝いしそびれちゃったな」
……あ、左の眉が下がった。
そんな小さな仕草に、言葉に、また胸がときめいてしまう。
けれどそれを抑えるように、心に生まれた期待の芽を摘みとっていく。
この場にいる相手は私でもいいし、私じゃなくてもいいんだ。
新鮮な気持ちで飲みたかった、くらいの理由で、選ばれただけだ。
そうだ、そうに決まってる。
だから、期待なんか、するな。
自分が傷つかないようにしていることなのに、どうしてだろう、心が重い。
今、この時間はあまりに貴くて、終わって欲しくないと思うのに。
胸が軋んで、どうしようもなかった。
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