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「羽村さん?」
神谷さんの呼びかけで、ハッとする。
気がつけば私は、空のグラスを握り締めていた。
「もうないみたいだけど、おかわりでいいの?」
「あ、えっと……待ってください、選びます」
慌ててメニューを取ろうと腕を伸ばすと、傍にあった小鉢を引っ掛けてしまった。
「わっ! ご、ごめんなさい!」
軽くパニックになりかけた私を制して、神谷さんは小鉢を引き取った。
「大丈夫、空だよ。それより……どうかした?」
「えっ……?」
「何だか、考え事でもしてたみたいだから」
「っ……」
答えられない私を見て、神谷さんは探るような目をしている。
けれどそれ以上追求することなく、そっとメニューを差し出してくれた。
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