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「あ、有沢和臣だ」
彼女はしっかり記憶するように、口の中で俺の名前を何度か呟く。
「和臣…ふむ、和臣か。これからしばらくの間よろしく頼むぞ」
彼女は凛々しく笑いながら言った。
「では契約の儀式を始める、和臣手を出してくれ」
なにが始めるのかさっぱりだが言われた通り右手を差し出す。
「少し痛いかもしれないが我慢してくれ」
すると指先を深く切られ、血が出てきた。
「…っ。」
夢の中なのに痛覚なんてあるのか。
そんなことを思っていたら、傷口がある指先を彼女が口でくわえた。
「なっ…!」
突然の出来事に驚いて振りほどこうとしたら目で制止させられた。
「ふぅ、これであとは…」
メリアーダが指先から口を離し、胸の上の方を手で押さえながら何かを唱える。
すると手で覆っている場所が光り、すぐに消えた。
「い…いったい何を」
胸から手を降ろし、こちらを向いた。
「言ったろう、契約の儀式と」
「今のが、そうなのか?」
「あぁそうだ、無事契約も交わされた」
これを見ろと、彼女は自分の胸あたりを指し示す。
そこにはさっきまで無かったはずの、真っ赤な模様が浮き出ていた。
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