第1話

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「あ、有沢和臣だ」 彼女はしっかり記憶するように、口の中で俺の名前を何度か呟く。 「和臣…ふむ、和臣か。これからしばらくの間よろしく頼むぞ」 彼女は凛々しく笑いながら言った。 「では契約の儀式を始める、和臣手を出してくれ」 なにが始めるのかさっぱりだが言われた通り右手を差し出す。 「少し痛いかもしれないが我慢してくれ」 すると指先を深く切られ、血が出てきた。 「…っ。」 夢の中なのに痛覚なんてあるのか。 そんなことを思っていたら、傷口がある指先を彼女が口でくわえた。 「なっ…!」 突然の出来事に驚いて振りほどこうとしたら目で制止させられた。 「ふぅ、これであとは…」 メリアーダが指先から口を離し、胸の上の方を手で押さえながら何かを唱える。 すると手で覆っている場所が光り、すぐに消えた。 「い…いったい何を」 胸から手を降ろし、こちらを向いた。 「言ったろう、契約の儀式と」 「今のが、そうなのか?」 「あぁそうだ、無事契約も交わされた」 これを見ろと、彼女は自分の胸あたりを指し示す。 そこにはさっきまで無かったはずの、真っ赤な模様が浮き出ていた。
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