第1話

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11月29日 あるアパートの一室。 時刻は16時37分 夕暮れだと言うのに、若い男が未だに眠りについている。 男は20代くらいだろうか、背丈はなかなか大きいように見える。 しばらくして布団がはだけ、足や腹がはみ出ている。やはり12月手前、体が冷えたのかうっすらと目があけられる。 「ん………ぁあ……朝か…。」 先にも記した通り、16時を優にすぎている。決して朝ではない。 男は気怠そうに掛け布団を足で押しのけ、体を起こし携帯電話で時間を確認する。 「……寝過ごした…」 男は言うが、微塵も焦った様子はない。 それもそのはず、男は無職、所謂ニートだ。寝過ごしたと言うのは、ただの口癖だろう。 男はベッドから移動し無造作に床に置かれたペットボトルのお茶を一口飲み、足の短いテーブルに近づき座椅子に腰掛け煙草に火をつけた。 「飯、買いに行かないと……風呂入ってから行こう。」 それから煙草消し、風呂に入りコンビニへ出かけた。 「1547円になります」 会計を済ませ男はコンビニを出る。 「はー、バイト…探さないと、電気いつ停まるかわかんねぇな」 口では言うが、実際に行動に起こしたことが一度もない。電気代も滞納しているようである。 家につき、コンビニで買ってきた弁当をレンジで温め、おにぎりなどを食べる。 「ふぅ、ネトゲするか」 食事を終え、パソコンのネットゲームを始める。 これがこの男の1日の流れである。夕方に起床し、コンビニに食事を買いに、帰宅したなら眠るまでネットゲーム、そしてまた夕方に起床。 そんな生活を私が男を初めて観察してからの今まで、半年近くは続けている。
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