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「あ~、あれね。ただの噂だって。面倒だから訂正してないだけで、モデルの彼女がいるのはお兄さんみたい」
「お兄さんいるんだ……」
突っ込むところが間違ってるような気もするけど、今はどうでもいい。
片桐専務情報だから間違いないって言うのりちゃんの声はもう聞こえなかった。
彼女いないんだ……。
だからといってどうにかなるものでもないんだけど。
何かが弾けたように、汗を光らせて駆け回る吉岡さんしか見えない。
あぁ本当に私、吉岡さんが好きなんだ……。
凄い彼女がいるらしいって聞いて、無理矢理諦めようとしていただけだ。
のりちゃんに言われてそうかなって思っていたのとは違って、自分で自覚してしまった。
ゴールに向かってボールを放つ姿も、仲間に笑いかける姿も、全て目に焼き付けていたくて、瞬きも忘れてしまうほどみつめていた。
からからに乾いた喉を潤そうと、持っていたペットボトルに口を付け、これを吉岡さんも飲んだんだって思い出して、更に体中の温度が上がった気がする。
中学生の初恋じゃあるまいしって自嘲的に笑いながら、残りのスポーツ飲料を飲み干した。
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