浮気の代償

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――井上七海。 思い出したくもない名前。一方的な感情を押し付け、ストーカーのように付回し、妻を狂わせ、俺らから職を奪った。 「一刻も争うんだ。早く行かなくては!」 りりかの真剣な眼に答えたかったが、綾の方が今は気がかりだ。あの子を失ったら、俺はなんの為に生きてきたのか分からなくなる。 「私も行くわ……彼女、鈴華さんが井上七海なんでしょう? あの人、入社した時から貴方を見る眼が異常だった――まるで狙いを定め、就職したみたいに」 「りりか、俺に余裕はないんだ。後は頼むぞ!」 言葉を遮り、走り出した。 だが彼女は俺の後を追い、少しづつだが語りかけてきた。
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