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『本当に酷い上司ですね』
茜に言われた言葉にぐさりと心臓を抉られた気がした。
少しずつ茜との距離を縮めてきたつもりだったのに、まだまだ俺はただの上司としか思われていないことに愕然とした。
どうせなら本当に眠っている隙に連れて帰ればよかったかな、なんて考えまで浮かび上がってくる。
ここまで想っているのに、伝わらないってどうなんだろう?
それほどまでに俺に興味がないって事なのか?
緊張でもしているのか、部屋の鍵がなかなか開けられずにいる姿まで愛しいというのに。
そんなことを考えていたら、あまりに滑稽な自分に笑えてきた。
「そんなに緊張しなくても、そう簡単に『部下』に手を出したりしないから安心しろ」
そうは言ったが上司だとか部下だとかは関係ない。
ただ茜にだけは、そう簡単に手を出せるほど軽い想いじゃないんだ。
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