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「早くカギかけろよ、おやすみ」
そう言って背中を向ける。
ずっと見ていたいけど、私がカギをかけないと吉岡さんは帰らないから、仕方なくドアを閉めてはっきり音がなるようにカギをかけた。
こつこつと靴音が遠ざかっていくのを玄関に座り込んだまま聞いて、何事も無かったようにタクシーに戻っていく後姿を窓からこっそり眺めていた。
優しすぎる上司も考えものだな……。
こんな風にされたら誰だって勘違いするんだから。
のりちゃんや白井さん達が立て続けに幸せになっていったから、つい私もなんて夢見ちゃった。
ただの上司と部下なのに……。
こんなことになるなら、1課に異動になったあの日、課長にもっと抗議すればよかった。
吉岡さんの部下になんてなりたくなかったよ。
「吉岡さんのば~か。ハハッ、バカは私か……」
誰もいない部屋に言っても返事なんて返ってこなかった。
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