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きっと彼女は俺とあの店で会ったことなんて覚えていないだろうし、今日だって目を合わせてもいないのに、何故か動揺して出てきてしまった。
初めて恋人に贈るはずだったプレゼント。
俺が仕事にやりがいを見出したあの時の彼女が、あの時の笑顔が傷つけられていたなんて考えもしなかった。
「あの子、里中茜ちゃんって言うんだって。彼氏に誕生日プレゼント買った次の日に、浮気されて別れたんだって言ってた」
里中茜……。
律儀にそんなことまで話したんだ……。
どこまでお人好しなんだよ。
「隣にいた子はたぶん人事課長の好みなんだろうな。今西さんだって、俺が人事だったら落としてると思う」
そんなことどうでもいいのに能天気に司は笑っている。
「……」
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