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「いいの。鍵なら職員室から借りてきたから」
美嘉はスカートのポケットから鍵を取り出して見せた。
たぶん先生たちの目を盗んでこっそり持ち出してきたのだ。
「ねぇ、ゆうべナナセ君から電話あった?」
鍵をドアノブに差し込んだ美嘉にアタシは聞いた。
ドアが開いて、アタシは美嘉にどんと背中を押された。
はじめて登った学校の屋上は、見上げると大きな夏の雲があった。
「電話があったからあんたを怒ってるのよ。よりによってあんなヤツにあたしの番号教えるなんて」
あんなヤツ?
メイや凛も、同じことを言っていた。
「どういう意味?」
美嘉は何もわからないでいるアタシに、中学生のときに起きた事件について教えてくれた。
美嘉が中学時代のことをあまり語りたがらなかったのは、その事件のことがあったからだった。
美嘉が中学二年生のとき、体育の授業から教室に戻ってくると、彼女のセーラー服に白い液体がいっぱいついていたことがあったという。
男の子の精液だった。
その事件は学校中に知れわたるほどの大事件になったという。
外部からの侵入者か、あるいは内部の者の犯行か。学校中でいろんな噂が流れたけれど、そのときは犯人は結局わからなかった。
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