第1話

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 すると今度は音楽の時間に、美嘉がリコーダーを吹こうとしたところ異臭がした。  おそるおそる分解すると中にべっとりと精液が詰まっていたという。  その後も何度も美嘉の鞄や、教科書、筆箱や弁当箱などが次々と同じ被害にあった。  美嘉や彼女の両親は警察に通報しようとしたけれど、学校は事件が表沙汰になることを恐れて、校長や教頭や担任の先生が菓子折りをもって美嘉の家を訪ねてきて、通報だけはしないようにと何度も頭を下げて揉み消そうとしたそうだ。  そして事件が起きた日は、必ず体育の授業がある日だということ、毎回体育に出ずに保健室で寝ていた男の子がいることがわかった。  それがナナセだったそうだ。  ナナセもyoshiと同じで、ふたりは県大会で戦ったこともあるバスケの名選手だった。事件は教師たちによってなかったことにされ、彼もスポーツ推薦でこの高校に入学したのだという。  アタシにはナナセがそんなことをするような男の子には見えなかった。  けれど、彼は中学二年から美嘉のことが好きだと言っていたし、美嘉には噂になっていた男の子がいたから告白ができなかったと言っていた。  自分の気持ちをどう抑えたらいいのかわからなくてそんなことをしてしまったのかもしれないなと思った。  中学生の男の子は大変だ。  だけど、いくら好きだからと言ってもしてはいけないこととしていいことがある。 「あいつ、電話であたしに何て言ったと思う?」  美嘉の問いにアタシは答えることができなかった。 「やっと繋がることができたね、ってあいつそう言ったの。気持ち悪くてすぐ電話を切って着信拒否したんだけど。今度は非通知でかけてきて、その次は家の電話から。最後には公衆電話からかけてきて。今度こそ繋がってくれるよねって」  美嘉は非通知の電話も、ナナセの家の電話も、公衆電話もすべて着信拒否したそうだ。
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