第1話

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――苦しいときもいつも見上げれば大っきな雲があって、アタシはそれに向かって歩いて行くんだ。  高校に入って、うまれてはじめて彼氏が出来た。  彼はyoshiって言って、本名はヨシノブっていう。  彼はその名前を嫌って、名前を書くときいつもきまってローマ字でそう書いた。  テストのときもそんな調子だから、yoshiは一学期の中間試験は全部0点だった。 「いいのいいの。どうせ白紙だし」  先生の赤いペンで右上に大きく0と書かれた答案を机の上に並べて、彼はまったく気にしていない様子でそう言ったので、赤点をとらないように必死で勉強したアタシは少し呆れてしまった。  yoshiは中学生のときに全国大会にも出場したバスケの名選手で、身長は一八〇センチもある。  勉強よりもスポーツに力を入れるうちの高校にスポーツ推薦で合格した彼は、アルファベットの小文字が全部書けなかったり、割り算が満足にできなかったりするけれど、学校は別に彼に勉強なんか求めていないからいいのだと彼は言った。  アタシがyoshiのことをはじめて意識したのは、5月に行われたクラス対抗のスポーツ大会だった。
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