1148人が本棚に入れています
本棚に追加
「わざわざありがとう」
「こうやって2人でいる時間が出来るのは、俺にとってはチャンスだからな」
気を遣わせないように言ってくれているから、今は甘えさせてもらおう。
「それはどうかな?」
「うわっ、ひでぇ」
冗談を言いあって笑いながら、じゃあなって踵を返して帰っていった。
オートロックを解除し、周りに誰もいないことを確認してエレベーターに乗り込む。
手紙の差出人がわからない今、隣人とはいえ他人と一緒に乗るのは怖い。
傍から見たら絶対挙動不審だろうけど、そんなこと気にしていられない。
1人暮らしをする時に母に持たされた防犯ブザーを、初めて鞄から出して鍵と一緒に握りしめる。
恐る恐る3階で降りて廊下の突き当たり、きょろきょろしながら辿り着くと握りしめていた鍵を差し込んだ。
そして珍しくドアポストに挟まれた封筒を引き抜く。
「もぅ、やだ……」
思ってもいなかった展開に体中の震えが止まらない。
両腕で体を抱きしめて、そのまま玄関に座り込んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!