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「里中さん」
急に呼ばれて振り返ると、何故か専務が後ろに立っていた。
「どうしたんですか？」
気付けば終業時刻を過ぎていて、慌てて立ち上がるとちょうど携帯が震えだした。
「たぶん紀子だと思う」
確認するとメールの送り主は本当にのりちゃんで、慎太郎が外出から帰ってきていないから専務に送らせるという内容のものだった。
「は？」
「そういうことだから行こうか」
「無理です。専務に送って頂くなんて……」
そんなの恐れ多い。
しかものりちゃんは残業で一緒じゃないなんてありえない。
「でも送っていかないと紀子が心配するし、もちろん僕もね。友人としても会社の上司としても見過ごせないでしょ」
会社の上司としてって言われてしまったら逃げようがない。
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