つかの間の休息

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繋がれた手は、1階のロビーを通る間も離される事はなくて、ちらちらと周りの人が見ているのに、平気な顔でどんどん歩いていく。 受付の綺麗なお姉さん達から鋭い視線が飛んでくるのにもお構いなし。 しかも受付の同期が泣きそうな顔で睨んでいる。 そういえば吉岡さんのこと好きだって言ってたよね。 研修中いろいろ聞かれたっけ。 まさかこんなことになるなんて思っていなかったから普通に答えていたけど、きっと誤解してるんだろうな。 手を引かれて、小走りでついていく私はどんな風に見えているんだろう。 きっといやな女だって思われているんだろうな。 いっそこのまま消えてしまいたい。 外に出ればまだ空は夕焼け色に染まっていて、東の空が少しだけ夜の色になろうとしている。 こんな時間に帰ることなんて滅多にないから、なんだか変な気分でいつもの大通りを歩く。 「あれ? 駅は反対ですよ」 「知ってる」 どこか別の場所へ向かっているのかと思いきや、やっぱり吉岡さんはタクシーを止めようとしている。 「電車ありますよ」 「だから、知ってるって」 .
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