つかの間の休息

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「何か言いたそうだな」 「えっと、高いところ大丈夫なんですか?」 会社の非常階段は8階でも無理なのに。 「けんか売ってるのか?」 「ま、まさか……」 勝てる見込みのないけんかなんてするわけない。 相手が吉岡さんなら尚更。 降参したほうが身のためだ。 ピクリと眉を震わせた吉岡さんの胸に頭を預け、チラリと上目遣いで見上げると。 「ばか、こっち見んな」 ちょっと照れた吉岡さんが顔を背けた。 頭の上からは大きなため息が落ちてきて、耳からは少し早い吉岡さんの心臓の音が聞こえる。 緊張しているのは私だけじゃないんだ……。 それだけで嬉しくなってしまう。 16階に降り立つと、そこは四方を部屋に囲まれた景色さえ見えないエレベーターホール。 雨風の心配もない上に、表示を見なければ何階かもわからない。 .
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