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ワンフロアに4件しか部屋がなくて、とても贅沢な作り。
そのチョイスがちょっと可笑しくて、くすっと笑ったのが見つかってぎろりと睨まれた。
吉岡さんの部屋は南側に面した部屋で、広いリビングの奥に広がった大きな窓から夜景が一望できる。
「すごーい! 素敵な眺めですね」
窓に張り付くように景色を眺めていると、少し離れた場所で吉岡さんが腕を組んだまま佇んでいる。
「もう見飽きた」
窓に近づかない理由はそれじゃないんじゃないかなって思うけど、この景色に免じて言わないであげる。
「贅沢ですね」
「この景色が見たければいつでも来ればいい。見たくなくても連れてくるけどな」
そんな風に言われると、改めて吉岡さんの恋人になれたんだって実感する。
プライベートをあまり明かさない吉岡さんが、私を受け入れてくれたってことだから。
でも、耳元で囁くなんてずるい。
いつの間にか真後ろまで来ていた吉岡さんが、そっと抱きしめるからぞくりと体が震えた。
後ろから私を包み込んでいる吉岡さんの腕に手を添える。
「はい、たまには来ます」
恥ずかしくて俯いたまま答えると、くすっと笑う声が耳に届いた。
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