つかの間の休息

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うっすらと目を開けると、まだあたりは薄暗い。 まだ朝ではないようだ。 もぞもぞと身動ぎはしてみたものの、寝返りを諦めもう一度眠りにつこうと目を閉じる。 夢の中へ沈んでいく途中、頬に感じる規則正しい寝息と嗅ぎ慣れた香水の香り。 無意識に安心感を与えるぬくもりに擦り寄れば、ぎゅっと包まれるような錯覚に陥る。 そこではたと気づき目を凝らせば、目の前には目を閉じた綺麗な寝顔のその人が、穏やかな寝息を立てている。 あれ?  デジャヴ? そう思ったのもつかの間、同じような状況に見えてもそうではなくて。 見渡す部屋は私の部屋じゃなく、昨日初めて訪れた吉岡さんの部屋。 そして吉岡さんと同じように私も裸で……。 思わず昨夜のことを思い出して心拍数が急上昇し始めた。 せめて吉岡さんが目を覚ます前に服を着たい。 そうっと腕から抜け出して、ベッドから足を片方出した時だった。 「はぅっ」 素肌のお腹に回った腕にぐいっと引き戻されて、変な声が出てしまった。 .
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