1552人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「う~ん」
ふいに寝返りを打とうと身を捩ったところで、体が思うように動かないことに気がついて目を覚ました。
うっすらと目を開けると、まだあたりは薄暗い。
まだ朝ではないようだ。
もぞもぞと身動ぎはしてみたものの、寝返りを諦めもう一度眠りにつこうと目を閉じる。
夢の中へ沈んでいく途中、頬に感じる規則正しい寝息と嗅ぎ慣れた香水の香り。
無意識に安心感を与えるぬくもりに擦り寄れば、ぎゅっと包まれるような錯覚に陥る。
そこではたと気づき目を凝らせば、目の前には目を閉じた綺麗な寝顔のその人が、穏やかな寝息を立てている。
って言うか顔近っ!
それもそのはず、片腕は私の頭の下。
人生初の腕枕状態。
もう片腕は私の腰に回されている。
明らかに抱きしめられている体勢。
「え? ちょっ」
慌てて身動ぎしても、その腕は緩むどころか抱きしめる力を強めた。
「うるさいなぁ」
.
最初のコメントを投稿しよう!