第2話

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「樹里を初めて見たときにはもう、 決めてたんだ。 あれと別れようって。 毎日、客に言い寄られて、 触られて、 持って帰られるおまえを見てるのが辛かった。 樹里が来たときには、 まだ子供が産まれたばかりでな… あれも、夜の保育園に預けて店に出てたから、 まだ、 決心が付かなかった。 俺が居なくなったら… って考えて。 毎日毎日客にいいようにされて、 おまえ目当てに来る客が殆どだから、 俺も言えなかったんだ。 やめろって。 繁盛したしな。おまえのおかげで。 あれももおまえが居なかったら今頃… ってなんども話してた。 ここ数年、売り上げが減ってたし、 はっきり言って、 うちなんかで働いてくれるいい女はなかなか居なかったから。 樹里… おまえはいい女だ。 いい女過ぎる。 こんな体で、その顔で、 そんな表情をされたら、堕ちない男は居ないさ。 客の気持ちも解る。 今日は誘いに乗ってくれるだろうかと、 毎日せっせとやってくるんだから。 でも、やっぱり、 生活を、あれを、子供を悲しませても、 俺はおまえが欲しかった。 自分だけのものにしたかった。 あのときは、今しかないって思った。 それまで、ふたりきりになることは無かったから。 触れた肩が冷たくて、びっくりした。 抱き締めたくて、 押さえられなかったんだ…」 唇が… 這い回って、 おかしくなりそう
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