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 一つ、昔話をしようか。  とある所の桜が綺麗でな、よく行っていたものだ。  毎年満開で、辺り一面桜が舞っていた。だがな、おかしなことに花見客が儂ぐらいしか居らんかったのだ。不思議だろう?   まぁ、人気が無い場所でもあったからだと思うが。  取り敢えず、毎年桜を見るのが楽しみだった。  ふとある日、桜を見に行ったら桃色であるはずが、雪のように真っ白な桜と変わっていたのだ。これまた不思議なことで、暫く立ち尽くしていた。  ゆっくりとその桜に近付いていくと、桜の木の側に人が立っているのが見えた。  先程までは居なかったはずなのにな。その人は桜と同じような長髪で、侍の格好をしていた。何故か違和感は感じなかった。  よく見ると、女性と見間違うほど美しい顔立ちをしていた。それに背も高かったな。  儂に気が付いたのか、こちらを向いて微笑んでいた。  何かを話そうとしたと同時に桜吹雪が起きてしまってな、気が付いた時には儂は自分の家の軒下で寝ていたのだ。  昔話というよりは不思議な体験話だったな。今日はこれで終わりだ。またいつか何か話そう。
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