現実逃避

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「自分でもよく分からないですけど、こういうのに慣れているというか。まぁ、祖父のお陰ですかね」  リビングへと招かれた忍者は、椅子に座りお茶を待っている状態にいた。  これも何かの縁、ということで青年は微笑み、お盆に乗せて持ってきた湯呑みとお菓子をテーブルに置く。 「あー......緑茶か」 「嫌でしたか?」 「......大好きだ」  黒いマスクを外し、一口飲む。  緑茶の温かさが冷えた体に染みる。久しく飲んでいなかったため、余計に美味しく感じた。 「そういえば自己紹介が遅れましたね。俺の名前は飛鳥です。高校二年生です。高校と言っても分かりますかね......?」 「ん、大丈夫だ。長いこと此処に居るからな」 「......なるほど」  この格好だからタイムスリップでもしてきた人だと思ったのか、そう訊いたのだろう。  青年――飛鳥は、一旦お茶をすすり次の質問を始める。 「月影さんは家族居るんですか?」  質問にしては何とも答えにくいものだと思ったが、一応答えることにした。 「家族......みたいなのは居るな。五人くらい」 「そう、ですか。楽しそうですね」  また微笑む彼に対して、少し複雑な気持ちになった。  彼には家族が居ないことを分かっていたが。 「淋しいなら俺が此処に住んでやろうか?」 「えっ」  もっとも本当の理由は、彼の近くに居れば先程の様に“異質な霊”が現れるはず、ということだが今は自分のことを含め黙っておくことにした。  彼は一瞬悩んだが、すぐに答えが出た。 「良いですよ。その代わり家事を手伝ってくださいね」 「も、勿論だ」  そんなこんなで、高校生と忍者の共同生活が始まったのである。image=478934829.jpg
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