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そう言うと颯爽と二人の横を通り抜けて、ドアの左側のノブに手をかけていた。
「えっ、あ。はい!」
「それは良いけど、どうやっていくの?」
佐藤の質問に、啓志はドアノブを捻りながら、自分が費用を持つからとタクシーで移動する事を提案した。
「でも、あなたはまだ……」
「いや、私も一応親の事務所に所属してますから、経費で落とせます」
二人は顔を見合わせて微笑み、啓志の後を追って部室を後にした。啓志は既に、スマホを片手に電話を掛けている。どうやら運転手に直通の電話のようで、一言二言個人的な話をしてから学校前に来てもらえるように頼んでいた。
◆◆◆◆
タクシーは住宅街の片隅で停まり、左側のドアが開いた。啓志は二十分後にまた来てもらうようにと頼んでから、すでにタクシーから離れていた二人の近くに向かう。
「さて、案内していただけますか?」
周りをキョロキョロと見回しながら、佐藤に案内を求めた啓志。うなずいた佐藤は、住宅とは逆の方向に位置している林を指差した。
「この中に、運んだわ」
「……なるほど」
右手の人差し指を唇にあてがっていかにも考えているようなポーズをとる啓志に、夕姫は、やってみたいって仰っていたやつですね、と言って冷やかしてみせる。啓志はそんな雑言に反応することなく、佐藤の方を向いて詳しい説明を求めた。
「暗かったからはっきりとは覚えていないんだけど、そんなに奥には行ってなかったはずよ」
「なるほど。では、行ってみましょうか」
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