一章 マジワル

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 サクサクと進む話に若干遅れ気味の夕姫は、林に向かう二人の背中を慌ただしく追いかけて行った。林の中は確かに薄暗く、竹も多いためか地面は湿り気味で地に落ちた葉もその影響を受けており、踏み出す足も軽快にとはいかないようで。  探し始めて二十分経った頃、辺りを捜索している三人は気分的に疲れを感じ始めていた。 「こう言っては失礼かもしれませんが、佐藤先生。本当にここですか?」 「間違いない。この辺りのはずよ」  恐る恐る尋ねる啓志に、佐藤は少し不機嫌そうに口をとがらせて答えた。しかし、鬱蒼(うっそう)とした林の中を二十分探しても見つからないという事実が、人の意欲を削り取っていくのも仕方のないこと。啓志も自分の変化と時間の経過を念頭に置いて、二人に提案する。 「とにかく、今は見つかりませんでした。また来るかもしれませんが……その時は父の知り合いを通じて警察の方にもお願いすると思います。先生、それでよろしいですか?」  佐藤は溜め息を一つ吐くと、分かったわ、と返した。夕姫はそんな彼女の肩を二度軽く叩いて、振り向かれた時にうなずいてみせる。 「大丈夫ですよ、きっと。先輩なら先生のことも助けてくれるはずです」 「も、ということは、高宮さんも何かあったの?」  知っている情報だけでは不整合が生じている接続詞をすかさず咎める辺り、さすがは国語科教師といったところか。思わぬ指摘を受けた夕姫は、返答に窮して俯いたまま濁らせた答え方をする。 「え、はい。ちょっと……。でも、先輩のおかげで今はご覧の通りです」 「そう。ご覧の通りのおっちょこちょい、ですね」
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