彼と彼女の真実

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吉岡さんは笑っていないし、呆れたと言わんばかりの表情をしている。 「だから言いたくなかったんだ」 もちろん実家に帰るなんて、火に油を注ぐようなものだ。 これは母にサインをとは言えそうにない。 「本当なんですか?」 「俺が嘘ついたことあったか?」 「あったかもしれませんけど……」 「バカ。そんなのあるわけないだろ」 そうやってじゃれている間もタクシーは私のうちに向かって走っていて、運転手さんはちらちらとこちらを窺っているようだけど、話しかけてはこなかった。 「それにしても、あんなに簡単に吉岡さんってわかるものなんですか? リナさんが言ったのかな?」 「どうだろうな。リナなら言うかもな。それに学生の頃に頼まれてモデルのバイトしてたときの写真もどこかにあるだろうし」 .
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