卯月

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朝起きて携帯を開くと、つばさくんからメールが来ていた。 『おはよう。 今日って、バイトの日?』 つばさくんは、夏目君の元バイト先の先輩の彼女で。そしてわたしの、ひとつ年上の友人でもある。 「じゃ、ないです、…送信」 彼女をつばさくんと呼ぶのは、彼氏である、早川千歳さんに倣ってのことだった。 知り合ったばかりの頃は、互いに名前にさん付けしていたが、今は呼びやすいところに終着していた。 つばさくんは以前、この街に「家出」してきた。 普段の穏やかな様子からは上手く想像できないけれど、ある夜、彼女は衝動的に家出してしまったのだという。 わたしはそのことを、彼女の家出から3年経って知らされた。 4日間で家出をやめて帰宅した彼女は、普通に中学、高校を卒業し、大学進学を機にこの街に戻ってきた。 それがほんの数日前の出来事で、以来つばさくんとは、再び友人として親しくしてもらっている。
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