卯月

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「急に呼び出して、ごめん」 「いえ、大丈夫です」 千歳さんと恋人同士になったばかりの彼女だが、ケーキ屋を営む彼は、土日はお仕事だ。 それでわたしに連絡をくれたのだろう。 「ケビンさんは、元気?」 夏目君は、千歳さんとつばさくん限定で、ケビンと呼ばれている。 ケビンっぽい顔立ちだからと、千歳さんが昔命名したらしい。 「はい。昨日は帰りが遅かったから、ついさっきまで寝てたみたいですけど」 「そっか。休みは土日なのかな?」 「大体は。でも仕事の納期次第で変わってきちゃうんだとか」 「そうなんだ…」 まだ学生のつばさくんとわたしには、正直ピンと来ない話だった。 「そのうちケビンさんにも会いたいな。早川さんも、よかったら今度一緒に飯食いに行こうって言ってた」 「分かりました。伝えておきます」 それからわたしとつばさくんは、3年前そうしたように、順路に沿って水の生物を観察していった。
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