卯月

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館内で一番大きな水槽の前で、わたしは小さな声でつばさくんに尋ねた。 「つばさくんは、いつから、千歳さんのことが好きだったの?」 鮫が泳ぐのを熱心に目で追っていた彼女は、わたしの言葉に反応し、きょとんとこちらを見た。 彼女が千歳さんに好意を持っていたことは、3年前、数日とはいえ一緒に暮らしていたことからも明らかで。 でも、何となく、それは恋とは結びつかないような気がしていた。 「いつから、だろう…。たぶん最初から、大分好きだったとは思うけど」 つばさくんは考えながら、そう口にした。 「早川さんに優しくされるのが心地よくて。少しずつ、欲が、出たんだ」 欲しい、と。 思ってしまった。 「よく分からないけど、全て手に入れるための手段が恋愛かなっていう気がして」 好きです、って言ってしまったんだ。 真顔で制御不能の感情について語った後、彼女は眉を下げて笑った。
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