10人が本棚に入れています
本棚に追加
館内で一番大きな水槽の前で、わたしは小さな声でつばさくんに尋ねた。
「つばさくんは、いつから、千歳さんのことが好きだったの?」
鮫が泳ぐのを熱心に目で追っていた彼女は、わたしの言葉に反応し、きょとんとこちらを見た。
彼女が千歳さんに好意を持っていたことは、3年前、数日とはいえ一緒に暮らしていたことからも明らかで。
でも、何となく、それは恋とは結びつかないような気がしていた。
「いつから、だろう…。たぶん最初から、大分好きだったとは思うけど」
つばさくんは考えながら、そう口にした。
「早川さんに優しくされるのが心地よくて。少しずつ、欲が、出たんだ」
欲しい、と。
思ってしまった。
「よく分からないけど、全て手に入れるための手段が恋愛かなっていう気がして」
好きです、って言ってしまったんだ。
真顔で制御不能の感情について語った後、彼女は眉を下げて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!