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「そうなんですか…」
どんな始まりであれ、二人が思い合っていて、上手く行っているなら、何も問題ないんだろうな…。
端から見ていても分かる仲の良さをうらやましく思っていると、つばさくんが「でも」と下を向き言った。
「自信、ない」
「え?」
「早川さんに付き合おうかって、言ってもらえたことは嬉しいけれど。早川さんが私と同じように私のことを思ってくれている、そんな自信は、ない」
つばさくんが俯くと、その長い髪が一瞬表情を隠してしまって。
声からでしか、彼女の感情を推し測ることができなくなった。
それは泣きそうな声に聞こえたけれど、顔を上げた彼女は数秒前と同じく、困ったように笑っていた。
「私は早川さんに、必要とされたい。私があの夏、早川さんの存在に助けられたように。私もいつかそうなれたらと思うんだ」
つばさくんの微笑みはひどく儚げで。
わたしは彼女の不安を打ち消す言葉を口にしかけたけれど、結局そうはしなかった。
だってそれはわたしの役割ではなかったから。
彼がきっと、そのうち何とかするだろう。
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