梅雨

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龍之介さんが帰ってきた翌週は、体育祭の週だった。 体育祭が終われば、さらに翌々週には中間テスト。 なかなかハードな月だ。 それもあって、しばらくバイトを詰め込んでしまっていたのだけれど…。 「土屋君」 「何」 「…増えてる」 「え?」 「参加者が増えてるっ」 恒例化、させられた、試験対策の勉強会。 迷える子羊がもこもこしているのはいつものことだけれど。 何だか、もこもこ、しすぎている。 「そこの彼は何年生?わたし、全く見覚えがないのだけれど」 「ああ、田口な。うちの期待の新人」 一年生…。 無言で、踵を返すと。 まるであの日を繰り返しているかのようなタイミングで、土屋君がわたしの手をつかんだ。 「まあ、待て」 「土屋君、契約は打ち切らせてほしいな。違約金はまた後日」 半ば冗談、半ば本気で告げると。 「今年の一年、野球バカが多すぎて、ほんとにヤバイんだって」 と、野球バカの代名詞みたいな土屋君はため息をついて、わたしに契約金の向上を約束してくれた。
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