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「土屋君」とわたしは彼を見据えて言った。
「分かってると思うけど、一応、言う。わたし、好きなひとがいるから、土屋君とは付き合ったりできない」
ん、と彼は微かに相槌を打った。
「わたしは君と友達でいたいけど、それはできるのかな」
吹きすさぶ海風に、一瞬目を細めて。
土屋君は言った。
「おまえ、頭いいけどバカだよな」
「…はい?」
「俺は確かにおまえのこと、そういう意味で好きだし、付き合いたいなって思うけど」
それだけじゃないだろ。
と、土屋君。
「水上が転校してきて。そっから今まで。何年一緒にいるのか、考えたら分かるだろ」
そう、だね、と。
わたしはちょっとしんみりしながら答えた。
「ごめんね、ありがとう」
「まあ、その不毛な片想い、やめたくなったら言えよな」
そのときが来ることはないんだろうな、とお互い知りながら。
お願いします、了解、と二人でやりとりした。
ふと、土屋君の頭上に視線を逸らすと。
雲の合間からのぞく夜空に、星がひとつ、きらきらと輝いているのが見えた。
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