梅雨

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家に帰ると、リビングには鏡花ちゃんしかいなかった。 「あれ、龍之介さんたちは…」 「んー、何かね、男同士で語り合いたいらしいよ。夏君と父さんは一緒に出掛けてる」 あとの二人は自分の部屋。 そう言って、鏡花ちゃんは再びテレビを見始めた。 と、思ったら。 高速でこちらを振り返り、すごくダイナミックにわたしの顔を二度見した。 「え!?よ、夜ちゃん何か目が赤いよ。どうしたのっ?」 隠し切れなかったか。こうなると、龍之介さんと夏目君がいなくてよかったかもしれない。 あの二人に突っ込まれたら、上手く対処できない。 「ちょっと、ね。でも大丈夫。心配してくれてありがとう」 「…あたしには、言えないこと?」 しゅんとした鏡花ちゃんには申し訳ないけれど、詳しく話すことはためらわれた。 「ごめんね。鏡花ちゃんは何も悪くないよ」 「うん、分かった。言いたくないことならいいよ。無理には、聞かない」 優しい彼女はそう言って、自分の隣の席を勧めてくれた。 テレビの画面からは、流行りの音楽が流れてきている。音楽番組を見るともなしに見ていると。 夜ちゃん、と鏡花ちゃんがささやくようにわたしの名前を呼んだ。
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