梅雨

2/37
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
アレン、と名前を呼ぶと、彼は目を見開き、わたしの方へ駆け寄ってきた。 「トーヤ、俺のこと覚えてんの?」 流暢な日本語で、彼は言った。 「今、思い出した…」 急な記憶のフラッシュバックにぼんやりしつつ、そう答えると。 「え!そっか…。俺、リューノスケから、記憶なくしてるって話を聞いてて」 「龍之介さん?え、何でアレンが?」 「もう学校終わりだろ?説明するから場所変えよう」 「わたし、今から龍之介さんと会う約束があるんだけど」 「うん、知ってる。じゃあ俺からリューノスケに言うから。二人で少し話そう」 わたしは頷いた。 すぐに彼は携帯を取り出し、電話をかけ始めた。 途中から早口の英語で話し出したので、全部は聞き取れなかった。 ちょっとこれは、言い合いをしているような…。 最後にわたしでも知っているスラングが聞こえてきて。 会話が終わった。 「よし、行こ」 いい感じの笑顔を見せて彼が言うので。 変わってないな、とわたしは懐かしさに微笑んだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!