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「夜ちゃん、あたし、夜ちゃんのこと好きだよ」
吐息混じりの声が、やわらかい。
「初めて会ったとき、夜ちゃん、すごくきれいだなって思った。今まで見たことのある、どんな女の子とも違って見えた」
鏡花ちゃんの飴色の目が、わたしを真っすぐに見つめている。
「夜ちゃんの周りだけ、空気が違うみたいに、しんとしていて。最初は分からなかったけど、でも後で、それが悲しいことだって分かった」
わたしは鏡花ちゃんの言葉に耳を傾ける。
鏡花ちゃんは夜の隙間を縫うように話を続けた。
「今は前より、自分を出してくれてるのかなって思うけど。それでも時々夜ちゃんが心配になるよ」
ひとまわり小さな手が、わたしの手をきゅっと握る。
指先から伝わる体温が、温かかった。
「例え夜ちゃんが自分のことを好きじゃなくても。あたしは夜ちゃんが好きだよ。ほんとの家族だと思ってるし、いつだって夜ちゃんの味方でいるよ。夏君も、他のみんなも、同じだから」
だからね、と鏡花ちゃんはこの上なく優しく微笑んだ。
「夜ちゃんは自分のしたいようにしたらいいと思う」
「…うん、ありがとう」
何があったかは知らなくとも、何かがあったと察して、心配してくれている。
わたしのことが好きだと言ってくれる。
それがひどく、嬉しかった。とても、とても、嬉しかった。
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