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翌朝、めずらしく朝食の席に龍之介さんがいた。
ただコーヒーを飲み、新聞を読むだけで、絵になるひと。
夏目君も、将来的にはこんな感じなのかな。
そのときわたしは、どうしてるのかな。
どこにいて、何をしているんだろう…。
ぼんやり龍之介さんの方を窺いながら朝食を取ると、食べ終えてすぐに携帯の着信が鳴った。
「すみません」と誰にともなく断り、席を立つ。
相手は…
「土屋君?おはよう」
「おはよ。今日、おまえ何時に家出る?」
「え?もうすぐ出るよ」
「じゃあ、一緒に学校行こ。そっち行くから」
「うん、分かった」
昨日のことを心配してくれているんだろうなと思ったので、わたしは特に何も訊かずに受け入れた。
こんな明るいうちから何かあるとは思わないし、それは土屋君も分かっているだろうけど。
心配してくれるその気持ちが嬉しかった。
「今日部活ないし、帰りも送れるから」
「そんな気い遣わなくてもいいんだけどな」
「いいから」
そういうわけで、土屋君と登下校をすることになった。
「それなら、家まで来なくていいよ。郵便局の辺りで待ち合わせよう」
郵便局の前で道を曲がると、住宅街に入る。茅島家はその住宅街の一角に位置しているのだけれど、少し道が入り組んでいるので、来てもらうよりは出向いた方が早い。
「了解。じゃあ50分くらいに」
「はい」
またね、と言って電話を切った。
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