梅雨

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体育祭は、クラス対抗で行われる。 種目ごとに得点を加算し順位を付け、その上位三クラスが表彰となる。 加点のメインは当然競技種目だけれど、「応援」もまた採点対象として認められている。 競技終了後に先生方が一人一票で投票し、それで応援のランキングがまた得点に加算されるのだった。 応援には違いないけれど、でもあれは。 ―仮装、みたいなものだった。 「他の子ならまだいいけど、「アリス」が抜けたらテーマ変わっちゃうから!」 そういえばうちは「不思議の国のアリス」だったっけ。 あの、とわたしは小さく挙手する。 「その代わりをわたしに、ということなら悪いけど遠慮させてほしいかな」 「急で申し訳ないんだけど、ほんとにお願いっ。あの子に合わせて衣装用意しちゃったから、ぶっちゃけ男子どころか女子もきついかもなんだよね…」 アリス役に決まっていた子を思い出し、わたしは溜め息をついた。 ノリのいい、バスケ部のエース。 スタイルがよくて、気さくでかわいいので、クラス外からも人気があるのだと、野球部の誰かが言っていた。 対してわたしは。 体重は少ないかもしれないけれど、凹凸のない、少年のような体型をしている。 ……。 「水上さんなら細いし、行けると思うんだよね」 「えと、できれば他の人を当たっていただけると…」 「いや、だってやっぱ応援で上位行きたいし。ここは水上さんに…!」 わたしは助けを求めるように土屋君の方を見た。
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