梅雨

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相手は変わったけれど、当初の予定通り、近くのハンバーガーショップに入り一息ついた。 と、同時に、大粒の雨が降り出した。 もう季節は梅雨か…。 窓をたたく雨を見るともなしに見ていると、トレーを持ったアレンがやってきた。 「はい、どうぞ」 「英語で言ってみて?」 「Here you are?」 中学校の教科書にハンバーガーショップで、というUnitがあった。 英語の教科書みたい、と言って笑うと、何言ってんだか、という目をして彼も笑った。 「龍之介さんとは、どういうつながりなの?」 彼はコーラに口をつけてから、答える。 「俺今東京の大学に通ってるんだけど、バイトでモデルをしてて。そのときに、リューノスケがカメラマンだった」 そういえば、彼はわたしの一つ年上だったな…。 「英語でも通じるから話しやすくて。飯おごってもらったりとかしてたんだけど。話、してるうちに、トーヤがリューノスケの子になってるって知った」 「そうだったんだ…」 「ずっと、トーヤのことは気になってた。急に教会に来なくなったから」 「うん、ごめん」 「元気にしてるみたいで、ほんとよかった」 ほんとよかった、という顔で微笑まれ、わたしは何だか泣きそうな気持ちになった。 胸が何かに押されたように苦しくなる。 「あのとき」も同じだったのに。 「彼」といたときの胸の圧迫感も、同じことだったのに。 何で、気付けなかったんだろう。
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