梅雨

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似合ってんじゃん、と第一声、土屋君は言った。 「……」 「怒ってる?俺が推したこと」 「怒ってはないけど」 「けど?」 「やらかしたなと思ってる」 先程、応援合戦、あるいは仮装パレードを終えたばかりのわたしは、野球部のベンチに座り試合を観戦していた。 グラウンドではサッカーの試合が繰り広げられている。 「やらかしたっていうなら、他のクラスのやつの方がやらかしてたと思うけどな。見ただろ、うちの部のやつらの女装」 「あー…すごかったね」 既に顔見知りとなっている面々が、今人気のアイドルグループを模して堂々と女装をしている様には、確かに勇気付けられるものがあった。 衣装を着て応援するのは初めの応援合戦、そして最後のリレー。 基本的にこの二回でいい。 ただ、周りが衣装を着たままでいるので、わたしもそれに合わせてアリスを続けていた。 まあ、参加種目の前に着替えればいいだろう。 「水上は、バレーだけだったっけ?」 「そう」 「じゃあ、これ終わったら一緒に体育館行こ」 「うん」 土屋君は複数の種目に駆り出されている。傍目にはあまり分からないかもだけど。 普通にうきうきしているのが、長年の付き合いで分かった。
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