梅雨

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前いた場所は、その点がはっきりしていた。 わたしは生活と引き換えに、彼に自分を差し出していたから。 彼に従属すれば、衣食住と愛情が手に入る。 それが痛いくらいによく分かっていた。 でも、ここは。 偶然、龍之介さんと出会って。 彼がわたしに無条件で、居場所として与えてくれた。 誰も、わたしに何かを要求してきたりはしない。 じゃあ、わたしがここにいる意味って何だろう。 どうしたら、失わずに済むんだろう。 どんな条件を守れば、夏目君の側にいられる? 昔のことを思い出したせいで。そんな、どうしようもないことばかり、考えてしまう自分がいた。
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