7人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは夏目君に告白されたことを、誰にも話していなかった。
話すとか話さないとか、それ以前に、自分が何をすべきかがよく分からなかった。
とにかく、混乱していたのだと思う。
まず初めに頭に浮かんできたのは、どうして、だった。
どうして、わたしなんだろう。
夏目君に好かれたいとは思っていたけれど、わたしはどこかで諦めていた。
無理だろうと決めつけて、何もしてこなかった。
人に好かれるような要素、明るさだとか楽しさだとか、そういったものはほとんど持っていない。
なぜ、わたしなのかと。
土屋君に好きだと言われたときには、何となくだけれど、分かるような気がした。
彼はわたしと正反対のようで、根っこの部分が似ていたから。
人との距離の取り方を、何でもないように見せながら、嘘みたいに緻密に計算してしまう。
彼もそうだと知っていたから、彼の前では何ひとつ繕う必要がなかった。
一緒にいるのは、心地よかった。
だから彼はわたしを選んでくれたのだろう、という確信めいたものがあった。
けれど、夏目君については。
全く分からない。
理由の見えない好意ほど、恐ろしいものはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!