葉月

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つばさくんから遊びに来ないかという連絡をもらったのは、夏休みに入って数日が経過した頃のことだった。 つばさくんには夏目君に告白したことを一番に打ち明けていたのだけれど、ちょうど前期の試験期間が近づいていたらしく、あまり詳しい話はできずにいた。 『この前はごめん。八月の一週目に全部終わるから、よかったらその後うちに遊びに来ないかな。久々にゆっくり話もしたいし』 ぜひ、と返信すると、日時の相談のメールが送られてきた。 そして約束した今日は。 つばさくん宅にお泊まりの予定になっている。 「このあたりまでは、あまり来ないのかな?」 「そうですね…」 つばさくんの住むワンルームマンションは、彼女が通う大学から徒歩圏内にあった。 わたしの家からそう遠い場所ではないけれど、高校、駅、自宅、という基本のラインから外れているので、訪れることは少なかった。 「だろうね。別に、何があるって訳でもないから。そうだな…、夕食の買い出しがてら、ちょっと散歩でもする?」 わたしは彼女の誘いに乗り、脱いでいた薄手のパーカーを羽織り直した。 「十夜ちゃん、背伸びたよね」 並んで歩いていると、ふと呟くようにつばさくんが言った。 「初めて会ったときは、私より少し低いくらいだったのに」 彼女と初めて会ったとき、わたしは中二だった。 身長は確か、150ちょうどくらいだったと思う。 「今何センチ?」 「164、かな」 「いいな。私もそれくらい欲しかったんだけど」 もう、伸びないだろうな。少ししゅんとして、彼女は言った。 大学の健康診断では、あと数ミリというところで160に届かなかったらしい。
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