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以上ですっと敬礼し、鏡花ちゃんは食事を再開した。
わたしはただそれを見ていた。
終始、彼女に言われたことの意味を考えていた。
「彼」が10歳のわたしにしたこと。最後にわたしに望んだこと。
それは本当に、こんな結果を生むためにあったことなんだろうか?
彼との契約は、確かに自分を傷付けた。
けれど、愛してくれた。
大切に、してくれた。
そうしてわたしのしあわせを願って、契約を解消してくれたんじゃないか。
今の自分は、彼が望んだ自分だろうか。
少なくとも、あのとき自分が望んでいた、誰のことをも不幸にしない自分には、なれていないんじゃないかな…。
「じゃあ夜ちゃん、落ち着いたら戻っておいでね」
店を出て、別れ際に鏡花ちゃんが言った。さっきまでの鋭い怒りは、もう見られなかった。
代わりに、向日葵みたいな笑顔で。
「あたし、控えめで、謙虚な夜ちゃんがかわいくて好きだけれど。でも、臆病で、夏君のことを傷付ける夜ちゃんは」
ビシッと人差し指を突き立てた。
「大嫌いよ」
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