7人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
海の、中。
遠くに光が煌めく水面が見える。
手を伸ばしても、声をあげても。
きっと誰にも届かないんだろうなと思う。
思ううちに、もっともっと深いところへと沈んでいってしまう…
「ーーちゃん」
光が。
遠退く。
「十夜ちゃん!」
目を覚ますと、心配そうに瞳を揺らすつばさくんがいた。
そうだった。わたしは今、つばさくんの家にいるのだった。
「大丈夫?何か、苦しそうに見えたから」
夢の余韻だろうか、妙な浮遊感に全身が包み込まれている気がした。
「大丈夫です。ごめんなさい」
「夢見がよくなかったかな」
「…みたいです」
「よくない夢は人に話すといいって言うし。何かあったら、夢でも何でも、話してくれて構わないから」
「うん、ありがとう」
「そしたら、朝ごはんにしようか」
彼女はわたしの頭に手を乗せて、優しく微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!