陽炎

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海の、中。 遠くに光が煌めく水面が見える。 手を伸ばしても、声をあげても。 きっと誰にも届かないんだろうなと思う。 思ううちに、もっともっと深いところへと沈んでいってしまう… 「ーーちゃん」 光が。 遠退く。 「十夜ちゃん!」 目を覚ますと、心配そうに瞳を揺らすつばさくんがいた。 そうだった。わたしは今、つばさくんの家にいるのだった。 「大丈夫?何か、苦しそうに見えたから」 夢の余韻だろうか、妙な浮遊感に全身が包み込まれている気がした。 「大丈夫です。ごめんなさい」 「夢見がよくなかったかな」 「…みたいです」 「よくない夢は人に話すといいって言うし。何かあったら、夢でも何でも、話してくれて構わないから」 「うん、ありがとう」 「そしたら、朝ごはんにしようか」 彼女はわたしの頭に手を乗せて、優しく微笑んだ。
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