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「…十夜は」
と夏目君は深い溜め息を吐いた。
「俺のこと、誤解してる」
「誤解…?」
夏目君は急に立ち上がり、わたしの手を引いて歩き出した。
順路の途中に備え付けられた自販機とベンチ。
簡素な休憩スペースまでわたしを連れて行き、壁に手を着いて、間にわたしを閉じ込めた。
「な、つめ君?」
「さっきの話で、俺が十夜を嫌いになると思った?」
わたしは首を縦に振った。夏目君の溜め息が、より一層、深くなる。
「なるわけ、ない」
夏目君はまっすぐわたしを見据えていて、目を逸らすことは許されなかった。
「俺が思ったのは。十夜に身勝手な理由で触れて、傷付けたやつを半殺しにしてやりたいってことと。同じことを、いや、それ以上のことを、俺が十夜にしたいってこと。……俺は、きっと、十夜が思ってるような人間じゃないよ」
夏目君が、弱々しく、笑った。
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